老い

実家の父が癌治療のため長期入院している。命に別状はなく、化学療法のため投薬治療で2週間程度の入院が複数回続いている。

入院中、父の唯一の?楽しみはiPadで、毎日動画などを楽しんでいるようだ。

一つ問題があった。病院内のWiFiを使用するのにソーシャルアカウントによる認証が必要で、QRコードを読み込んだりパスワードを入力したりするのが父にとっては敷居の高いものだったため一人では接続できず、ずっと携帯電話の通信を使っていた。

昨日、通信量の上限にまもなく到達することがわかったのだが、遠方でお見舞いに行けるところではないため通信手段を手配する術がなく、半月ほど低速接続で乗り切るしかないという状況に陥った。

院内WiFiに何とか繋ぐしかないので、FACE TIMEを使用して、父と一緒に画面を見ながら認証手続きを行なった。

1時間ほどかかって、ようやく接続まで辿り着いた…。会話している中で父の声がだんだん大きくなってしまい、看護師さんに注意されてしまった。

無事繋がったのは本当に良かったのだけれど、僕らにとって当たり前のことが、一つ上の世代にとってはとても難しいのとなのだと痛感した。手取り足取り説明しても「どうすりゃええんじゃ…」と苦戦する父が、とても弱い存在に感じられた。

母が昨年70代前半なのに他界し、その時から老いと死が自分にとって近いものになった。そして今、父もまた少しずつ老いている。そう遠くはないいつか、手も声も届かぬところへ行く。

父が生きているうちに、自分の家族と一緒に旅行に行きたいと考えている。本当は今年の夏に行くはずだったが、入院が必要になってしまって延期せざるを得なかった。

自分には、あとどれだけの時間が残されているのだろうか。

父との時間、妻との時間、子供達が子供達のままでいる時間、そのどれもが、実はそれほど多くはないのかもしれない。

今目の前にある、一緒に過ごせる時間を大切しなければならない。